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現場レポート・調査

物価高・電気代値上げによる貧困の拡大について調査を行いました!

7/15に行った相談分析会を通して、フードバンク仙台の相談者における貧困の実態をまとめました。今回、集計の対象としたのは、今年の4〜6月の間にフードバンクが食料支援を行った計601世帯です。また、同時期に電話での聞き取り調査を行い、個別の相談者の生活実態を明らかにしてきました。これらの調査から、「生活に不可欠なものを何か削らないと生きていけない」という度を超えた「節約」の実態、物価高・値上げという共通の苦しみがあらゆる属性の世帯を困窮させているということが浮き彫りになっています。

7/15の分析会と、そこでの分析をもとに行った8/3の記者会見の様子については過去のブログをご覧ください。

◎分析で分かったこと

・深まるライフラインの貧困
分析にあたって特に私たちが注目していたのは、ライフラインの料金を滞納している人がどれくらいいるのか、ということです。理由は、私たちが去年の秋から始めた「ライフライン無償化プロジェクト*」を今後も行う上で、ライフラインの貧困が去年と比べてどう変化しているのかを明らかにするためです。
*ライフライン無償化プロジェクトのこれまでの取り組みについて詳しくはこちらをご覧ください

以下が、2022年度と、今回集計した2023年4~6月との比較です。滞納している人の割合が、値上げが著しかった電気とガスで特に大きくなっているいることがわかります。

2022年度

·電気を1~3カ月滞納している世帯は、約32%にあたる957世帯

·ガスを1~3カ月滞納している世帯は、約31%にあたる947世帯

·水道を1~3カ月滞納している世帯は、約27%にあたる802世帯

(総世帯数世帯3023、複数回答)

2023年4~6月

·電気を1~3カ月滞納している世帯は、約37%にあたる224世帯

·ガスを1~3カ月滞納している世帯は、約38%にあたる230世帯

·水道を1~3カ月滞納している世帯は、約30%にあたる180世帯

(総世帯数世帯601、複数回答)

↑電気とガスの滞納世帯は4割近くまで増加

・フードバンクを必要とする人が増えている
フードバンク仙台を初めて利用する「初回利用」の人の割合が全体の26%にまで上ることがわかりました。これが意味するのは、今までは食料支援がなくても生活できた世帯でもフードバンクが必要になってきているということ、つまり貧困がどんどん拡大していると言えます。三ヶ月間で食料支援を行った計601世帯のうち、26%にあたる156世帯がフードバンク仙台を初めて利用しています。

・まともに食べられず、病院にも行けない
過去一ヶ月間にどのような生活を送っていたかについて、「一日3食を摂れていない」との回答が260件、「何も食べていない日があった」との回答が75件もありました。食事を十分に摂れなければ、体調を崩してしまうリスクが大きくなります。また、最近の猛暑により熱中症による死亡者数・搬送される人の数が増えており、電気代滞納世帯の多いフードバンク利用者ではより一層そのリスクは大きいと言えます。しかし一方で、「お金がなくて病院に行けていない」という回答が138件にも上りました。栄養不足や熱中症により体調を崩しても、今度はそれを治療するお金がないという状況が容易に起こり得てしまいます。後で見るように、実際に相談者の方の中には、不調があるのに病院に行けないという危険な状態にある人が少なからずいます。

・安心して住めない家=広い意味でのホームレス
さらに、 家賃についての質問回答者469件のうち、172件(36%)が家賃を滞納、43件(9%)が支払いに不安を抱えています(未回答を含めると、601件のうち28%と7%の35%にあたる)。滞納したからといってすぐに家を追い出されるわけではなかったとしても、いずれここに住めなくなるのではないかという不安を抱えながら生活している人がこれだけいるということです。

電気代を気にしてエアコンがつけられなかったり、家賃が払えないという不安を抱えたりと、「安心して快適に住める住まい」を得るということが脅かされています。相談者の中には、家具や調理器具を片っ端から売ってなんとか生活費の足しにしているという人も少なくありません。このように、生活に必要なものが揃っておらず、安心して暮らせない家というのは、家としての機能を果たしているとは言えないという意味で広義の「ホームレス*」と言えるのではないでしょうか。

*日本のホームレス概念は非常に狭く限定されており、路上や駅舎で生活する人だけを指すことがほとんどですが、イギリスの住宅法では、家庭内暴力を受けていたり緊急事態のために施設に住んでいる人などもホームレスとして定義されます。さらに、不良な住環境であったり、基本設備のない家もホームレスに含むとするヨーロッパの非営利団体もあります。

・困っても誰にも相談できない社会
また、「困りごとについて、誰かに相談していますか?」という質問では、「誰にも相談していない」と答えた人が最も多いという結果になりました。食料支援を利用する多くの人は、上で見たようにライフラインや食事を安定的に得られない困窮した状態にあるにもかかわらず、フードバンク仙台に来るまで誰にも相談できないほど、助けを求めるということが今の社会でどれだけ難しいのかがよくわかります。
また、役所などに相談したとしても使える制度がない、という問題もあります。すでに福祉制度(生活保護や給付金)を使っている人や、生活保護の対象外(収入要件をわずかながら上回っている人、学生や外国籍の人)である場合は、食料支援を受けることくらいしか生活を今すぐに改善する手立てがないのです。

◎一人一人の聞き取りから見える共通の問題

データの集計によって客観的な数や割合を出すことができましたが、実際それぞれの相談者はどのような生活を送っているのでしょうか。これまでにフードバンク仙台の食料支援を利用した相談者の方々に、電話で聞き取りを行いました。聞き取った内容を見ると、収入は増えないのに支払いばかりが増えて、過度な節約をせざるを得ない状況に多くの人が置かれていることがわかります。

事例①:50代女性
生活保護と年金で生活している。この間の電気代の値上げで2,3月は3万円くらいかかってしまった。そのせいで、家賃38000円を1カ月滞納せざるを得ない状況になった。食料もいつ買えなくなるか分からない状況。体調が悪いため、エアコンはつける必要があるが、その分の支払いが大変不安。

もらえる額が決まっている年金と生活保護では、最近の物価高や値上げに対応できないということが表れています。エアコンは体調のためにつけざるを得ないため、そのしわ寄せが家賃や食費に影響しています。

事例②:26歳 女性
サービス業の非正規雇用労働者。職場のハラスメントや人間関係の問題などで、短期バイトや派遣の仕事を転々としており、いまは窓口業務のアルバイトで平日5日フルタイムで働いており、月収約25万を見込んでいる。「家の中にいてもしょうがない」と思い、エアコン節約などのために半日外を歩いている。エアコンが効いているので、図書館で過ごすこともある。

現在のバイトの契約が10月に切れてしまうため、その後の生活基盤をどうするか不安だと話していました。また、たとえ家があっても安心して快適に過ごせないのであれば、家としての機能を果たしているとは言えないのではないでしょうか。

事例③:40代女性、子ども1人
工場の派遣労働者。児童扶養手当を合わせ、収入はひと月約16万円。電気代・ガス代・水道代はすべて滞納中で、毎回「止まる→支払う→止まる…」を繰り返している。自治体の給付金は支払いですぐ消えた。生活の苦しさについて誰にも相談できず、「生きていること自体がつらかった」「でも子どもがいるから何とか生きていた」。食生活への影響:朝は何も食べない。昼間は水分と飴だけで生活。夜ごはんだけ食べる。子どもには3食食べさせているが、物価高騰、エネルギー価格の高騰もあり、子どもの食事量も減らさざるを得なくなっている。食事のレパートリーは基本的にもやし、納豆、豆腐、米のみ。
節約の実態:電気代節約のため、基本的に家で電気はつけない。

物価高騰対策として行われた給付金を使っても、滞納していた分の料金を払うだけですぐになくなってしまい、生活を改善するには不十分だということがわかります。子供だけにはなんとかちゃんとした食事をさせたいと思っても、値上げや物価高でどんどん切り詰めなくてはいけなくなっています。

事例④:67歳 女性 一人暮らし
年金生活。収入はひと月約8万円。徹底した節約をしているため、ライフラインの滞納はしていないが、生活に支障が出ている。健康の面では病院に通院したほうがよいのだが、ずっと行くことができていない。食生活への影響:イオンなどのスーパーでの割引品しか購入していない。そのせいか、頻繁に食当たりで体調を崩している。
節約の実態:夕ご飯以外の時間は豆電球しか点けない風呂は3日に一回しか入らない

この方は、滞納こそしていないものの、病院代や食費といった他の支出を徹底して減らすことでやりくりしています。このように、滞納世帯に含まれていない世帯の中にも、ライフラインの値上がりを受けて「過度な節約」を迫られ「人間らしい生活」を送れない人が他にもいると考えられます。

事例⑤:22歳 女性 一人暮らし
ベトナム出身の専門学校生。 老人ホームのパートタイム労働者。週に5回、1日に4~5 時間労働。収入はひと月約7万円。アルバイトの収入は、家賃、電気・ガス・水道、食費ですべてなくなり、学費のための貯金を削らざるを得なくなっている。学費を支払うことができる見込みがなくなってしまっている
食生活への影響:節約のためにインスタントラーメンやサンドイッチ以外は買わないようにしている
節約の実態:夏にエアコンは使わない。食事も廉価で低栄養なものになっている一方で、労働は過酷で、そのうえ一日4時間しか寝ることができないため、鼻血が頻繁に出て病院に搬送されたことがある。しかし現在は節約のため病院には行けていない。耳に持病を持っているが病院に行くことができないので、症状が放置されている。

こちらの専門学生は、バイトのお金が生活費で亡くなってしまい、学費のための貯金を削って生活していると話していました。食事も栄養が偏りがちになり、具合が悪くても病院に行けない状況です。支払いに振り回されて、生きていくために必要ないろいろなことを犠牲にしなければならないのです。

事例⑥:23歳 男性 一人暮らし
塾講師のアルバイトをしており、月収11万円。現在6人でルームシェアで暮らしており、家賃、光熱費合わせて5万4000円。携帯料金は約1万円。食費0-5000円。
食生活への影響:1日1食が基本。昼食にパン、スーパーの総菜、同僚からもらうカップラーメンなどでしのいでいる。大幅に痩せたと周りからよく言われる。胃の調子がすごく悪い。病院には行っているが、節約のためなるべくかかりたくない。不安で眠れないことがある。

食費0~5000円という、限界を超えた節約によって、周りの人から心配されるほど身体にも影響が出ており、生活の不安が睡眠にも影響しています。

あらゆる属性・年齢の人が、値上げ・物価高騰という共通の問題によって、「安心して人間らしい生活を送る」ということが不可能にさせられていることがわかります。事例①の人の例からも分かるように、国のセーフティネットと言われる生活保護を受けている人でさえ、保護費が安く値上げなどに対応できないという問題により、保証されているはずの最低限度の生活が送れていないのです。


電話での聞き取りの様子

◎怒っていいし、諦めなくていい

私たちは、このような実態をただ「ひどい社会だ」と絶望したり、「大変な人もいる」と流してしまうのではなく、「こんなことは当たり前じゃない」と声を上げたいと思っています。コロナも、物価高騰も、気候変動も、困窮する人たち自身が原因では無いことによって、生活や家計が圧迫されているのです。一方で、東北電力などの電力会社は、この間の値上げで赤字を解消するばかりか、莫大な黒字を出しています。大企業が儲けるための値上げによって市民の生活が脅かされているという、全く正当性のない状況がまかり通ってしまっています。

しかし、相談者の人たちと電話などで話していて思うのは、「自分が会社でうまくやっていけないから悪い」「もっと先を見通してやりくりしていれば」と、自分を責めたり、困窮していることを情けなく思う人がとても多いです。食料をもらうことや、生活保護を受けることが恥ずかしいことのように思わされてしまうのが今の社会なのだと思います。本来は、食べることや、快適で安心できる家があることは、その人がどんな属性を持っていてどんな事情があったとしても、守られなければならない権利です。そして、その権利が守られていない現状に対して「怒る」「声を上げる」「権利が守られる社会をつくる」ことがもっとあっていいはずです。


環境NGO・Fridays For Future Sendaiと合同の、エネルギー貧困への対策を仙台市に求めるデモ 2023年3月3日

◎一緒に声を上げましょう!

私たちの多くは、フードバンク仙台または仙台POSSEでボランティアをする若者(高校生から社会人)が中心となっており、ライフライン無償化プロジェクトもその中で結成されました。ボランティアとして参加できることは、以下のように色々な形があります。貧困のない社会・誰でも生きていける社会を作るための取り組みに加わってみたいという方は、まずは関心のあるところからぜひご参加ください!

〈今後も行っていく取り組み〉

・東北電力が行った値上げに対する公開質問状の送付など、電気代値上げに反対するアクション
・水やガスが停止してしまった人に対する開栓支援など、料金を払えなくてもライフラインの供給を止めさせないための取り組み
・困窮する人が生活や労働問題について相談できる相談会の開催
・賃上げなどの労働相談に向けた、移民労働者をはじめとする非正規労働者へのアウトリーチ
・フードバンク仙台が運営する農地への参加


アウトリーチ(労働相談を呼びかけるチラシを地域に配る)の様子

フードバンク仙台が運営する農地での様子

〈こちらもご覧ください〉
・ボランティアの募集はこちらから行っています!

フードバンク仙台 https://foodbanksendai.com/volunteer/

仙台POSSE https://sendaiposseblog.wordpress.com/activity-introduction/

・フードバンク仙台のInstagram、Tik tokでも活動の様子を発信しています!

Instagram https://www.instagram.com/foodbank_sendai/

Tik tok https://www.tiktok.com/@foodbanksendai?_t=8evt2WwFvve&_r=1

・ボランティアの若者が活動について話すラジオ番組が、Youtubeで配信されています。

「みやぎのZ世代が現場から新しい社会をつくる」 (毎月第4火曜日20:30〜21:00 FMたいはく78.9)https://www.youtube.com/@posse6782/videos

 

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