活動紹介

私たちは2020年5月、新型コロナウイルスの感染拡大による生活困窮者の急増をうけ、困窮されている個人(外国人、留学生、ひとり親世帯、路上生活者、日本人学生など)の食の支援が必要な方を対象に年齢や国籍を問わず迅速に食料支援をおこなうことを第一の目的にして活動を始めました。今では、新型コロナウィルスの感染拡大とは無関係に、社会で飢えている人たちへ食料をとどけるため日々活動しています。私たちは、困窮世帯へ国籍や年齢や性別や障害の有無等にかかわらず普遍的に食料を提供し、困窮の背景にある問題の解決の支援や、この活動を通して見えてくる社会的課題の解決のための調査活動や政策提言を通して、誰も困窮しない社会の実現を目指して活動しています。同じ命、同じ人間なのに、貧富の差や生産性、人種や性別などから優劣がつけられ、一方では食べれない人がいるような社会に対し抵抗し、また、市場によらなくても食料が供給され、人が安心して生きていける社会に適した新しい食料供給システムの構築を目指します。

さらに当団体ではフードバンク活動を通して、余剰食品を集めて食品ロス削減に貢献するなど環境問題にも取り組みます。国連環境計画(UN Environment Programme)が発表した『Food Waste Index Report 2021』によると、2019年時点での世界全体の食品ロス(Food waste)は9.3億トンがでています。食品ロスは、焼却すれば二酸化炭素を発生させ、埋め立てれば二酸化炭素の25倍以上の温室効果を持つメタンを発生させます。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、食品ロス由来の温室効果ガスは全体の8〜10%を占め、自動車からの排出量とほぼ同じです。この食品ロスをなくすことは、気候変動対策として重要な位置を占めます。日本では、食品ロスの量が年間570万トン(2019年時点、農林水産省・環境省)と推計されており、日本の人口1人当たりの食品ロス量は年間約45キログラムです。また、世界の食料廃棄量は年間約13億トンで、人の消費のために生産された食料のおおよそ3分の1を廃棄しています。人が生きるのに十分な食品があるにもかかわらず、先進国を中心とした多くの国で大量に食品ロスが発生し、その一方で人が飢え、食品ロスが気候変動に大きな影響を及ぼし気候変動による死者が出るような社会は、不公平かつ不公正です。望ましい社会ではありません。食品ロスの削減に関わる取り組みを通して、そのような社会を変えるため、食品ロスの削減を通じて、新しい生産システムの構築を目指していきます。

食品ロスとなっている食料を集め、貧困者に支援していくフードバンク活動は、貧困問題や環境問題という社会問題の解決につながる、大きな意義があります。この活動は、命と暮らしを守る活動であり、権利擁護活動であり、市場経済論理で優劣がつけられ、人間が物や金としてみられる社会への抗いであり、人と自然の共存の在り方であり、そして分け合い助け合う社会づくりの一つの方法だと考えています。

私たちフードバンク仙台は、飢えに直面している人々を社会からなくすために活動している団体です。この活動を通じてフードロスの削減を行いCO2の削減に貢献し、気候変動の解決にもつなげていきます。

 

食料支援

当団体では、直接、個人世帯から食料支援の依頼を受け付けて食料支援と生活相談支援をおこなっています。この食料支援を通して「どこにも相談していない」「そもそも相談先や社会保障を知らなかった」方々へ対して、状況に合った生活相談をおこない情報提供や支援機関の紹介、生活保護申請同行などを行うことができます。私たちは食料支援を入り口として、必要な支援につなぐというコロナ禍において社会的に非常に重要な相談機関の役割を担っています。

 

生活相談支援

2021年度から「生活相談チーム」を設け、困窮世帯の困難を詳しく聞き取り、生活保護の申請同行、借金の整理のための法律家の団体の紹介、休業手当等の請求のための労働組合の紹介などを行うことができました。2020年度はじっくり相談支援ができた世帯は年間数十世帯程でしたが、今年度は9月だけで延べ20世帯程に相談支援を行いました。そのことで、生活保護以外にも、住居確保給付金、休業支援金などの行政の制度や、債務整理、住居支援、DV被害者支援などについて情報提供し、利用をサポートすることで生活の根本的な改善につなげることができています。引き続き「貧困や飢餓をなくす」ためボランティアを募集し、必要な研修を積み相談対応にあたれる支援体制を充実させて、一人でも多くの困窮者への生活相談支援に力を入れていきます。

 

生存権の確立

フードバンク仙台は設立から述べ1万5000人へ食料支援を行ってきました。失業者や非正規社員のみならず、正社員、大学生にまで食料すら不足する貧困が拡がっており、その背景には、様々な問題が複合的に絡まっています。

例えば、コロナの影響により会社都合で休業になったにも関わらず休業手当が払われずに困窮してしまった、職場でパワーハラスメントを受けて心身の体調を崩してしまい働けなくなってしまった、などの労働問題があります。私たちは、連携している労働組合と共に会社に休業手当や未払い賃金を払わせたり、職場環境を改善したりします。

また、最後のセーフティーネットである生活保護が使えないという問題もあります。生活保護を利用するために役所に行ったところ、「家族に頼れ/若いから働け/車を持っているからダメ
と違法に追い返されてしまった人からの相談が多々あります。これに対して私たちは、当事者と一緒に役所まで申請の同行をしたり、行政の違法な対応の改善を求めたりします。

他にも、困窮してしまい料金が払えず、電気やガス、水道が機械的に止まられてしまったという方も多くいます。これには、ライフラインが普遍的な権利として保障されずに、お金が無ければ生きるうえで必要なものにアクセスできないという問題があります。私たちは、このようなシステム自体に異議を唱え。政策提言や行政への申し入れなども行っています。

このように、フードバンク仙台は一時的な食料支援に留まらず、貧困の背景にある社会問題を解決するための活動を行っています。現場の活動を通して目の前の生存権を獲得し、貧困は自己責任ではなく社会問題であると世に可視化させる点で意義があると思います。私たちの活動は、貧困が拡大する社会を現場の活動から変えていき、「誰もが普遍的に生存が保障される社会を作る」ためのものです。

 

フードロス削減・気候変動問題への取り組み

フードバンク仙台に毎月数多くの相談が寄せられていることからもわかるとおり、今の社会では食料を十分に買うことができない人がたくさんいます。しかし、その一方で食べられることなく捨てられるたくさんのフードロスが存在します。

FAO(国際連合食料農業機関)の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。日本だけでもフードロスは約522万トン発生しており、これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。

そのうえ、フードロスの廃棄により年間44億トンの温室効果ガスが排出されます。これは世界の温室効果ガス排出の約8〜10%にあたる量で、中国やアメリカ合衆国が1年間に排出する温室効果ガスに近い量を排出していることになります。温室効果ガスの排出により気候変動が激化しており、温室効果ガス削減は国際社会の大きな課題となっています。

生活が苦しい人がこれだけいる一方で、なぜ食料がこれだけ棄てられているのでしょうか。それは、食料生産の第一の目的が人々の飢餓を解消し、胃袋を満たすことではなく、食料を商品として市場で売り、利益をあげることになっているからです。余った食料を無料で配布するよりも、それらを捨ててしまう方が利益を追求する人々にとっては最も合理的な選択なのです。余った食料が無料で配布されるようになれば、食料価格は下落し、かつそのための輸送や貯蔵などのコストもかかることになります。利益をあげようと思うとそれらは不都合なことです。

利益を上げるための食料生産はフードロス以外の問題も発生させています。例えば、ブラジルでは世界中で消費される大豆や牛肉をつくるためにアマゾンの熱帯雨林に火が放たれ、大規模な伐採が進んでいます。プランテーションによる大豆栽培や家畜の栽培に必要な大量の水を確保するために、地下水が持続不可能な速度で電動ポンプでくみ上げられており、水源の枯渇の問題も発生しています。自然環境を保全することや持続可能性を考慮することはコストになるため、これらの事情は無視され環境が破壊されています。

そのうえ、プランテーションで働いているのは借金を背負っている奴隷です。彼らは賃金をもらうことなく、文字通り奴隷的に働かされ、使いつぶされています。これはブラジルだけで発生している例外的な現象ではなく、利益をあげるための食料生産が行われている世界中で発生していることです。
できるだけコストをかけないほうが利益が上がるため、農薬を大量に使用したり、害虫に強い遺伝子が組み替えられた食品が世界中で生産されています。そのように作られた食料は、食べた人間の健康に悪影響を及ぼすことが世界中で報告されています。とりわけ日本は農薬の基準が低いため、日本で売られている食品を海外に持っていくと空港で廃棄しなければならないものがたくさんあると言われています。

現在フードバンク仙台では、一部の企業や農家、個人の方からの食料の寄付を集め、食料が必要な人に配布しています。お金を介さずに食料の流通を行うという点で、既存の利益をあげるための食料システムとは異なる、新しい社会のあり方を示すものです。

しかし、現状の寄付を集めて分配する取り組みだけではフードロスをはじめとした食料問題を解決することはできません。利益追求の論理に食料が左右される現状を変えていくことが必要です。

より具体的には、お金もうけのためではない食料生産のあり方を構築し、そしてお金の有無によって食料へのアクセスが制限されない、誰もが健康的で必要な量の食料にアクセスできるような全く新しい食料システムを作る必要があります。

フードバンク仙台では、現状の活動を続けるのと同時に、もっと人間にも地球環境にもやさしい、全く新しい食料のあり方を目指すため、海外の事例や食料システムを検討する研究会を継続的に開催し、新しい実践を模索しています。

 

新しい社会システムの構築

私たちは、困窮世帯へ国籍や年齢や性別や障害の有無等にかかわらず普遍的に食料を提供し、困窮の背景にある問題の解決の支援や、この活動を通して見えてくる社会的課題の解決のための調査活動や政策提言を通して、誰も困窮しない社会の実現を目指して活動しています。同じ命、同じ人間なのに、貧富の差や生産性、人種や性別などから優劣がつけられ、一方では食べれない人がいるような社会に対し抵抗し、また市場によらなくても食料が供給され、人が安心して生きていける社会に適した新しい食料供給システムの構築を目指します。

「食」や「住」が無償や低額で供給される仕組み、フードロスになりそうな食品が必要な人に無償で届く仕組みなどを、考えていきたいと思います。

その実現のため、私たちは研究会を立ち上げる予定です。具体的なものができ次第、発信いたしますので、興味がある方は、ぜひご参加ください。

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