今回のブログでは、フードバンク仙台の活動の様子をご紹介します。
◎仙台の貧困実態を可視化する
7/15(土)、フードバンク仙台や仙台POSSEで活動する学生10人ほどが集まり、フードバンク仙台に寄せられた相談の分析会を行いました。
食料支援の申請フォームの情報をもとに、どのような属性の人たちから相談が多いのか・去年と比べてどのような変化があるかなどを明らかに、質問ごとの回答結果をグラフや表にまとめ、その結果からどのようなことがいま仙台で起きているのかを議論し、検討しました。
フードバンク仙台は、今年度4〜6月までに既に、計601世帯、(人数不明世帯は1人世帯とすると)総人数1194人に対して食料支援を行ってきました。あらゆる世帯が様々な社会的要因を背景に生活が苦しくなっており、食料さえも買えない状況になっています。食料を買うことができなくなった理由として「物価高騰・エネルギー料金の高騰」を理由に挙げている世帯が279世帯と約46%に上ります。物価高騰やエネルギー料金の高騰による影響がとても大きいということです。
また、今年度に入ってからの、ライフライン滞納者のフードバンク仙台への相談者全体のなかに占める割合は以下です。
・電気を1~3カ月滞納している世帯は、約37%にあたる224世帯
・ガスを1~3カ月滞納している世帯は、約38%にあたる230世帯
・水道を1~3カ月滞納している世帯は、約30%にあたる180世帯
(総世帯数世帯601、複数回答)
昨年度のライフラインの滞納者は、電気32%、ガス31%、水道27%(総世帯数:3023世帯)であり、いずれのライフラインの滞納者の割合も増加しています。
現在、家があったとしても、エアコンやガスが十分に使えずに人間らしい生活を送れていない、常に家を失う不安を抱えながら生活をしなければならない相談者が約40%もいることが調査から分かりました。連日の猛暑が続くなか、こうした状況に一刻も早く対策を講じるべきことは明らかです。たとえば、総務省によると熱中症による救急搬送がもっとも発生しやすいのが「住宅」で、令和5年7月17日〜7月23日には全国で4005人もの人が住居の中で倒れたとといいます(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html)。
しかし、この物価上昇の中で、多くの人が「食料を買うか、光熱費を支払うか、家賃を支払うか」の苦渋の選択を迫られており、支払いができないままでいれば、ホームレスになることや命を落とすといった可能性が十分に考えられます。
◎貧困の実態を訴える記者会見を行いました!
以上のような実態について、「ライフライン無償化プロジェクト」では8/3(木)にフードバンク仙台の事務所で記者会見を行いました。エネルギー貧困の深刻化や、新しくフードバンク仙台に相談する人が増えている=どんどん生活苦が広がっているということを、テレビ局や新聞社に向けて伝えました。記者会見で使用した資料はこちらをご覧ください(分析会で作成した各種資料を添付しており、仙台の貧困の実態を紹介しています)。
20230803 ライフライン無償化プロジェクト 記者会見資料.docx.pdf
〈参加した学生たちの声〉
前野めぐるさん(大学2年生)
「相談に来る人の多くが、困窮しているのは自分のせいと思って、食料をもらう事に申し訳なさや情けなさを感じている。でも背景には社会的な要因があって、全くその人たちのせいではない。この社会を『おかしい』と感じる人がもっと増えてほしい」
國富美羽さん(大学3年生)
「全国で何千人という人が熱中症で亡くなったり、搬送されるという異常な事態。全員が貧困によるものではないとしても、電気代を払えなくなるのが怖くてエアコンを使えないという人は確実にいる。本来あってはならない事だし、一人もそういう人を出してはいけない」
笠原沙織さん(東北大学経済学研究科M1)
「最近あった市議選でも貧困はあまり論点になっていない中で、ただ票を投じるだけでは大きく社会が変わることはない。だからこそ私たちは実態調査や自治体への要求、農地運営を行っている。自分たちの手で社会を作っていくことが必要、もう待っていられないという状況に来ている」
「多くの若者が、『なんかこの社会やばくなってきているな』と思いつつも、自分にできることは4年に一度の選挙か、SNSで何かをリツイートするか、と可能性を狭めてしまっている。若者に限らず一人の人間としてできることはもっとあると思うので、何かしたいと思っている人を集めていきたい」
鴫原宏一朗さん(東北大学農学研究科M1)
「私たちのもとに届く相談では、みんな不可能な節約をしている。これはもう節約ではなく、人間としての権利が侵害されているという事以外の何でもない」
「値上げに関する実態は報じられているが、それを見た多くの人が『自分も節約頑張らなきゃ』というベクトルで頑張ってしまう現状。一人で頑張っても今の状況でやりくりは不可能だから、おかしい状況に対して、普通に生きていける権利をみんなで求めていこう」
◎ライフライン無償化が今必要
ここ最近の猛暑と電気代の値上げにより、暑くてもエアコンがつけられないという危機的な状況がフードバンク利用者を中心とする困窮世帯の間で広がっています。一方で、東北電力をはじめとする大手電力会社は値上げによって赤字を解消するばかりか黒字を出しています。このような情勢の中で、私たちが去年の秋から要求してきた「ライフラインを無償にする」ことの必要性と緊急性はますます高まっています。同時に、「無償にしてほしい・すべきだ」という社会的な気運も、プロジェクトを始めて以来今が最も大きいと感じています。
今後も仙台市などへの要求をし続けるとともに、東北電力への値上げに関する公開質問状を送付するなど、色々な角度からこのエネルギー貧困・ライフラインの貧困にアプローチしていきたいと思っています。
記者会見のメディア報道はこちらから↓↓
河北新報:「食料配布の利用世帯、半数が物価高騰で困窮 仙台の団体が調査」(20230812)
https://kahoku.news/articles/20230811khn000030.html
NHK:「電気代高騰でエアコン使えず” 生活支援団体に相談相次ぐ」(20230803)
https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20230803/6000024402.html
◎「ひとりも殺させない」、一緒に貧困に立ち向かう仲間を募集しています!
今回紹介したような分析会や電話での聞き取りをこれからも行い、ライフライン無償化プロジェクトをはじめ貧困をなくすための取り組みを広げていくためには、一緒に活動する人がもっと必要です。
相談者の方から話を聞いて支援をしたり、貧困の背景にある問題について考えたりしたい人はぜひご連絡ください。さらに、このブログのようなインターネットでの発信を今後充実させていくために、動画編集や文章執筆を行う人も増やしていきたいと思っています。
この貧困の状況を変えられる何かをしたいという方は一緒に活動しましょう!