調査・研究

支援現場からみえた困窮者の実態と原因

私たちの支援の現場には、日々生存や人としての尊厳を脅かされている人々からの支援依頼が寄せられます。下記の調査データは、当団体が2021年度上半期に食糧支援を行った延べ1,327世帯(延べ3,211名)からのアンケートから明らかになった困窮者の実態です。

日本でも広がっている貧困や飢餓

食料支援依頼者のうち貯蓄が「0円」の世帯は半数を超えています。貯蓄が「10万円未満」と合わせると79%にも達します。貯蓄がある場合でも、わずかな貯金を切り崩して生活していたり、食費を極限まで切り詰めていたりと、余裕のない状況にある人が多くいます。「数日間水しか飲んでいない」「食費にお金を回すために必要な通院を控えている」などの深刻な相談も少なくありません。
最近では2週間以上食事を食べておらず、水も数日飲めておらず、今にも倒れそうになっている方からの相談も寄せられ、即座に駆けつけて支援をおこないました。
日本でも、このような極度の貧困や飢餓状況が広がってしまっているのです。

約8割の世帯が生活保護基準以下

食糧支援依頼世帯のうち、生活保護水準以下の収入しかない世帯は全体の76%(収入不明世帯をのぞくと88%)にのぼりました。食料の購入が日常的に困難になる状況は決して特殊なものではないことが分かります。

生活相談支援が必要な理由

実は食料支援だけで貧困をなくすことはとても困難です。先ほど述べた通り、私たちの食料支援の依頼者の8割ほどが生活保護基準以下の収入しかないのですが、実際に生活保護を申請している世帯はごく一部にとどまっています。
利用者へのヒアリングから、その背景には生活保護への社会的な差別や偏見や誤った制度理解が強く関係していることもが分かりました。支援の現場でも「生活保護は受けたくない」「(車や持ち家があり)受けられないと思っていた」等、生活保護を誤解している場合が多くあります。

6割がどこにも相談していない・9割が役所に相談していない

フードバンク仙台の食料支援利用世帯の約6割は、他の貧困支援団体や社会福祉行政などに相談していないと回答しています。また生活保護水準以下の生活をしている食料支援利用世帯のおよそ 1 割程度しか「役所」に相談していないこともわかりました。
私たちの生活相談によって、制度に対する正しい情報をお伝えしたり、なかなか一人で役所の窓口に行く勇気が出ない方に付き添って制度利用のサポートを行うことで、困窮の背景にある社会保障制度の利用から排除された状態を解消することができています。
以上のような理由から、貧困や飢餓状況を解決するためにフードバンク仙台では食料支援と同時に生活相談支援に力を入れており、一体化させた総合的な困窮者支援を継続したいと考えています。

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