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現場レポート・調査

【支援現場レポートVol.1】ダブルワークでも生きていけない、Aさんの事例

相談支援の現場から、生活困窮を生み出す社会を問う

フードバンク仙台では、食料支援に加え、困窮の要因を根本から解決していくための生活相談(福祉制度や相談機関の紹介など)を日々行っています。
ここでは今後、こうした相談の中で聞き取った内容をご紹介し、拡大する生活困窮の実態やそれを生み出している社会的背景について考えていきます。

※ご紹介する相談事例は、すべて匿名での発信許可をいただいたものです。

相談事例:シングルマザーのAさんと子どもの2人暮らし

もともとは、Aさんの父、Aさん、息子の3人で暮らしていた。Aさんはパートとして週5フルタイムで働き、月17〜18万円の収入を得ていた。しかし、2020年に父が死去し、同時期にコロナ禍の影響によるシフト削減で収入が大幅に減少してしまった。

Aさんは減少分を補うため、もう一つ別の会社でも働き始めた。日によっては、1社目で5時間、2社目でも5時間など、計10時間以上働くこともあった。

こうした働き方を続けていたところ、腰椎椎間板ヘルニアと半月板損傷を発症し、入院。退院後も左足の麻痺が残ってしまい、日によっては、立つことや歩くことすら痛くてできないこともある。そのためシフトも減り、収入は少ない月で11万円、多くても15万円ほどにまで落ち込んだ。さらに、1つ目の会社の時給は1,090円であり、15年間働いているにもかかわらず、ほとんど上がっていない。

病院にも定期的な通院が必要だが、お金がなくて行けていない。食事は、昼はおにぎり1個だけ、夜は家に残っているもので済ませている。新しい服も何年も購入していない。最近では、家に帰っても家事ができないほど体が痛むときには、「消えてしまいたい」と思うこともある。

Aさんの困窮の背景にある「低賃金」

Aさんの賃金は15年間働き続けてもほとんど上がっておらず、宮城県の最低賃金1,038円とほとんど同じです。その結果、ダブルワークをしなければ生計維持が困難になり、長時間労働を余儀なくされた結果、体を壊し、一層の生活困窮に陥ったといえます。

このように、名目上は「パートタイム」労働でありながら、低賃金ゆえに実際にはフルタイムかそれ以上に働き、過労が原因で身体に不調をきたす(最悪の場合、働けないほどに体を壊す)、というケースは珍しくありません。

生存を保障していない非正規の賃金

そもそも、現在の非正規の賃金がここまで低い背景には、国が定める最低賃金自体が実質的には生存を保障できる水準になっていない、という問題があります。もともと非正規の賃金は、あくまで稼ぎ主である夫や父親などがいる世帯での「家計補助」的なものとして扱われ、賃金を低く抑えることが正当化されてきました。

こうした中、1990年代以降に大不況が訪れると、企業は正社員の割合を減らし、低賃金の非正規雇用の割合を増やすなど、その存在を雇用戦略に組み込んでいくようになりました。こうした雇用環境の変化により、若者や女性を中心に、パートやアルバイトの収入で生計を立てなければいけない「家計自立型非正規」が増加し、低賃金で生きていけない層が増加していったのです。

シングルマザー世帯の生活困窮を生み出す構造

今回の事例のように、シングルマザー世帯の多くが生活に困窮している背景にも、非正規の低賃金問題が関係しています。ひとり親の場合、働ける仕事がパートやアルバイトなど非正規雇用に限られており、その賃金が生存可能な水準ではないため、実家などの頼る先がなくなればすぐに生活が成り立たなくなってしまうのです。

近年の政府主導の残業規制を見直す動きや、いわゆる「副業ブーム」などの現象は、こうした低賃金の雇用条件下、社会ではインフレが加速し、単独の仕事では生計が維持できなくなっていることの一種のあらわれとして把握することができます。賃金の低さをそのままに、働く時間を増やすのではなく、賃金そのものを生存できる水準に引き上げていくことが重要ではないでしょうか。

非正規春闘で声を上げる労働者たち

こうした問題意識を背景に、近年では「非正規春闘」という、非正規雇用で働く人たちが、個人加入できる労働組合などを通じて勤務先の企業に賃上げや待遇改善を求める取り組みが毎年行われています。

特に昨今のインフレを背景に、最低賃金水準で働く人は実質的な賃下げ状態にあると言えます。世界中でもコロナ禍以降、Amazonやスターバックスなどの大企業で労働組合が結成され、各企業へ生きていける賃金をもとめ労働者が声を上げています。

こうした取り組みは身近なところでも起きています。2026年の非正規春闘では、フードバンク仙台を利用していた日本語学校の留学生が連携先の個人加盟ユニオンに加入し、アルバイト先のヤマト運輸に25%の時給引き上げを求めました。実際に2023年春闘では、「回転ずしユニオン」による要求で、回転ずしチェーン店「スシロー」の一部店舗で最大時給200円の賃上げを獲得しているなどの成果もでています。

参考リンク:ヤマト運輸で働く2人の留学生がユニオンに入り、時給25%アップを求めて申し入れをしました!

今後も、恒常化する国際戦争や異常気象によるエネルギーや食料品の値上げが見込まれる中、実質賃下げ状態の非正規労働者の生活困窮は深刻化することでしょう。
こうした状況を根本から変えていき、体を壊して必死に働かなくても普通の生活が送れるようにするためにも、非正規労働者たちによる賃金の大幅引き上げ要求が重要ではないでしょうか。

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