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新しい社会システムの構築

フードバンク仙台に毎月数多くの相談が寄せられていることからもわかるとおり、今の社会では食料を十分に買うことができない人がたくさんいます。しかし、その一方で食べられることなく捨てられるたくさんのフードロスが存在します。
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンの食料が毎年廃棄されています。日本だけでもフードロスは約522万トン発生しており、これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。
そのうえ、フードロスの廃棄により年間44億トンの温室効果ガスが排出されます。これは世界の温室効果ガス排出の約8〜10%にあたる量で、中国やアメリカ合衆国が1年間に排出する温室効果ガスに近い量を排出していることになります。温室効果ガスの排出により気候変動が激化しており、温室効果ガス削減は国際社会の大きな課題となっています。
生活が苦しい人がこれだけいる一方で食料がこれだけ棄てられているのでしょうか。それは、食料生産の第一の目的が人々の飢餓を解消し、胃袋を満たすことではなく、食料を商品として市場で売り、利益をあげることになっているからです。余った食料を無料で配布するよりも、それらを捨ててしまう方が利益を追求する人々にとっては最も合理的な選択なのです。余った食料が無料で配布されるようになれば、食料価格は下落し、かつそのための輸送や貯蔵などのコストもかかることになります。利益をあげようと思うとそれらは不都合なことです。
利益を上げるための食料生産はフードロス以外の問題も発生させています。例えば、ブラジルでは世界中で消費される大豆や牛肉をつくるためにアマゾンの熱帯雨林に火が放たれ、大規模な伐採が進んでいます。プランテーションによる大豆栽培や家畜の栽培に必要な大量の水を確保するために、地下水が持続不可能な速度で電動ポンプでくみ上げられており、水源の枯渇の問題も発生しています。自然環境を保全することや持続可能性を考慮することはコストになるため、これらの事情は無視され環境が破壊されています。
そのうえ、プランテーションで働いているのは借金を背負っている奴隷です。彼らは賃金をもらうことなく、文字通り奴隷的に働かされ、使いつぶされています。これはブラジルだけで発生している例外的な現象ではなく、利益をあげるための食料生産が行われている世界中で発生していることです。
できるだけコストをかけないほうが利益が上がるため、農薬を大量に使用したり、害虫に強い遺伝子が組み替えられた食品が世界中で生産されています。そのように作られた食料は、食べた人間の健康に悪影響を及ぼすことが世界中で報告されています。とりわけ日本は農薬の基準が低いため、日本で売られている食品を海外に持っていくと空港で廃棄しなければならないものがたくさんあると言われています。
現在フードバンク仙台では、一部の企業や農家、個人の方からの食料の寄付を集め、食料が必要な人に配布しています。お金を介さずに食料の流通を行うという点で、既存の利益をあげるための食料システムとは異なる、新しい社会のあり方を示すものです。
しかし、現状の寄付を集めて分配する取り組みだけではフードロスをはじめとした食料問題を解決することはできません。利益追求の論理に食料が左右される現状を変えていくことが必要です。より具体的には、お金もうけのためではない食料生産のあり方を構築し、そしてお金の有無によって食料へのアクセスが制限されない、誰もが健康的で必要な量の食料にアクセスできるような全く新しい食料システムを作る必要があります。
フードバンク仙台では、現状の活動を続けるのと同時に、もっと人間にも地球環境にもやさしい、全く新しい食料のあり方を目指すため、海外の事例や食料システムを検討する研究会を継続的に開催し、新しい実践を模索しています。

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